不動産・住宅ローン

”住宅ローン減税3年延長”マイホーム購入時期に影響はでるのか?

自民、公明両党は12月14日午後、2019年度与党税制改正大綱を正式に決定した。

注目を浴びるのは、2019年10月に予定される消費税増税(8%→10%)対策の一つである「住宅ローン減税」の改正です。

“住宅ローン減税を受けられる期間が現行の10年から13年に延びる。10年目まではローン残高の1%、11年目以降は建物価格の2%相当額を控除する。”

という内容が、今回の改正の概要となります。

住宅ローン減税の期間延長(10年→13年)

「住宅ローン減税」に関わる改正内容をまとめていきましょう。

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制度の詳細は、政府からの正式な発表を元にアップデートを予定しています。

対象

2019年10月から2020年12月末の間に新規契約、引き渡された住宅やマンションが対象となります。また、住民票を移して居住する人に限られます。

また、契約から入居までに時間がかかる注文住宅の場合は、2019年4月契約分からが減税対象となります。

Q.既に住宅ローン減税を受けている人は?

A.3年間の延長が報道される中、既に住宅ローン減税を受けている方も3年間延長されるのか?答えはNOです合計13年間の住宅ローン減税対象者は、上述した2019年10月以降の契約者が対象となるため既に控除を受けている方は対象外となります。

減税期間

現行の住宅ローン減税は10年でしたが、3年の延長によりトータル13年の減税が得られることになります。

減税額

当初の10年間は、現行と同じで年末時点の住宅ローン残高の1%が所得税・住民税から控除されます。(年間50万円/上限:最大500万円)

11年目以降の減税額は、“建物価格の2%を3等分”と“住宅ローン残高の1%”を比較した場合の額を比較し、少ない方の金額が実際の減税額となります。

住宅ローン減税の概要

今一度、現状の住宅ローン減税の制度についておさらいしておきましょう。

(参照)「すまい給付金サイト」国土交通省

住宅ローン減税は、住宅ローンを借入れて住宅を取得する場合に、取得者の金利負担の軽減を図るための制度です。

そして、毎年末の住宅ローン残高の1%が10年間に渡り所得税・住民税から控除されます。

対象物件は、新築住宅・中古住宅・増築/リフォーム物件が対象になります。※詳細な要件は省略します。

控除を受けるためには、確定申告を実施する必要がありますが、最大500万円の控除が受けらます。対象の方は、利用しないと損になるため、必ず利用するようにしましょう。

住宅の購入は、“増税前VS増税後”どちらがオトクか?

さて、今回の住宅ローン減税期間延長の発表を受けて、最も悩むことは何でしょうか?

おそらく、“増税前”と“増税後”どっちで住宅を購入した方がいいのか?という疑問ではないでしょうか。

現時点では、税制改正によって“増税後”の方がオトクとは言えないでしょう。

なぜ言えないのか?その考慮しなければいけないポイントについて、見ていきましょう。

  • 減税総額
  • 消費税負担
  • 家賃支出
  • 金利リスク
  • 東京オリンピック

「減税総額」はどうなるか?

まずは、住宅ローン減税の期間延長による減税総額はどうなるかという点です。

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【条件】4,000万円(建物:2,000万円、土地:2,000万円)の新築戸建てを購入する場合※35年ローン、金利1%という条件で試算

現行の制度では、控除額は10年間で約346万円となる。

一方、今回の改正で、控除額は13年間で約429万円になります。

つまり、増税後に住宅ローン控除を使った方が83万円お得になる計算だ。

控除額だけを比較すれば、“増税後”に購入した方がいいのではと思うかもしれません。

住宅購入にかかる「消費税負担」はどうなる?

忘れてはいけないのが、住宅取得時にかかる消費税率が現行と改正後は異なる点です。
では、上記と同じ条件の場合、消費税負担はどうなるのでしょうか?

増税”前後”の消費税負担額の違い

現行:2,000万円 × 8% = 160万円
改正:2,000万円 × 10% = 200万円

なお、消費税は建物のみにかかるものであり、土地にはかからない点はご存じの通りでしょう。

つまり、住宅取得において、消費税負担では“増税後”の方が40万円損する計算となります。

購入を遅らせることで発生する、「家賃負担」は?

次に考慮するポイントは、購入を先延ばしすることによる“家賃負担”です。

本来であれば、早めに購入し、家賃分の金額を住宅ローンの支払いに充てることができるはずです。

例)家賃7万・10万を半年or1年間先延ばしした場合、家賃負担額

家賃7万円/月 家賃10万円/月
半年間先延ばし 42万円 60万円
1年間先延ばし 84万円 120万円

住宅ローン控除を3年間延長したいがために、住宅購入を安易に先延ばししてしまうことは住宅ローン返済に充てる金額分を損している可能性があります。

住宅ローンの「金利リスク」はないのか?

また、住宅購入に際して最も注意が必要で、予想ができないのが“金利”の動向です。

現在は、超低金利時代と言われ、変動金利であれば0.4%台で住宅ローンを組むことが可能です。

しかし、この低金利が1年後まで継続している保障はあるのでしょうか?

仮に、同程度の金利で推移していればラッキーですが、その金利動向を予測はできても、確実ではありません。

金利が上昇することで、①借り入れ可能な金額が減少する②月々の返済額が増加するといったデメリットが生じてきます。

これらリスクが、住宅ローン減税の期間延長によるメリットを上回ってしまっては、逆に損してしまう可能性があります。

2020年オリンピックの影響は?

住宅購入において、2020年の東京オリンピック開催は、逆風です。

ある住宅メーカーの営業マンの話では、オリンピック開催が決定してから、住宅価格は1~2割程度上昇したとのこと。

そして、住宅価格の推移は、オリンピックが終了するまではそれほど下がらないと予想されています。

つまり、3年延長が適応となる対象期間(2020年12月末)までは、住宅価格はほとんど変動せず、それ以降に下落する可能性はあります。

住宅価格が少しでも安くなったら購入しようと考えている場合は、おそらく住宅ローン減税改正の恩恵とは縁が遠いと考えられます。

結論:住宅購入は“増税後”が必ずしもオトクではない!

以上、5つの考慮するポイントについてまとめてみました。

例)新築戸建て4,000万円(建物:2,000万円、土地:2,000万円)※35年ローン、金利1%

2019年9月末まで(増税前) 2019年10月以降(増税後)
減税額総額 346万円 429万円
消費税負担 160万円 200万円
家賃負担 比較的少ない 多い
金利リスク 上昇リスク低い 上昇リスク高い
東京オリンピック 影響あり 影響あり

このように、住宅ローン減税の3年期間延長が適応されることによって減税される控除額は増えます。

しかし、適応となる19年10月まで購入を先延ばしすることは、購入時の消費税負担の上昇や余分な家賃負担増、さらには金利上昇リスクなどをはらんでいます。

実質、半年程度住宅購入を先延ばしにしてしまったら、消費税負担と家賃負担で延長によって増加した控除額はチャラになってしまいます。

目先の控除額だけで、マイホーム購入時期は“増税後”がいいという判断は避けるべきでしょう。

既に現時点で住宅購入を検討しているのであれば、今回の税制改訂による期間延長に左右されず、ご家庭の意向に沿って話し合いをしてみてはいかがでしょうか?

まとめ

2019年税制改正の目玉の一つである、「住宅ローン減税」の3年延長によって13年間の減税。

単純に期間が延長されるから、”増税後”にマイホームを購入した方がオトクと考えるのはストップです。

今回の改正は、あくまで消費税増税のプラス2%分を還元する目的で盛り込まれた内容である点をお忘れなく。

現在、マイホーム購入を検討されている方は、住宅ローン減税など総合的に判断してみると”今”が購入時期になるのかもしれません。